キリシタン灯篭と天使
『古都』とキリシタン灯篭
『古都』作品の冒頭には「なん百年かの風雨に朽ちこぼれて、ただ頭とからだと足の形がそれと見られるだけである」キリシタン灯篭が登場します。
川端康成は「しかも、四條通に近い問屋で、八坂神社の氏子」なので、毎年のことだから、祇園祭はめづらしくはな」く、「
北野天満宮には数多くの灯篭がありますが、キリシタン灯篭は一基だけで、気づかずに過ぎてしまう人も少なくありません。 これは呉服問屋に来る商客の中でも中庭のもみじのくぼみに咲いたすみれの花に気づく人が稀で、 また商客の殆どは下に灯篭が置いてあること、 しかもその灯篭の足あたりにキリストが刻まれているということに興味を持つどころか「庭に灯篭の一つや二つはあたりまへで、 よく見もしない」のと同じとも言えます。
1961年10月9日 朝日新聞
「北野の天神さんに、よう似た大きいのがありましたえ」と千重子が話した通り、今も「よう似た大きいの」を北野天満宮で見かけることができます。その名は「織部形石灯篭」です。
北野天満宮・織部形石灯篭
北野天満宮の「織部形石灯篭」案内文には次のように書いてあります。
茶人好みの石灯篭の一つにて吉田織部正重然(元和元年六月十一日没)の墓にあるものの形に因んで名付けつけらるマリア像の彫刻あることに俗にマリヤ灯篭切支丹灯篭ともいう
ちなみに…川端康成はすでに『舞姫』で次のように織部灯篭を取り上げています。
「さう?しかし、カトリックとお茶とは、昔は縁がありますよ。たとえば、織部灯篭を、キリシタン灯篭ともいふでせう。」と言ひながら、矢木は座った。
「古田織部の好みで、灯篭の柱に、キリストを抱いた、マリアらしい像が、彫こんである。キリシタン大名の、高山右近の作だといふ、茶しゃくもあるさうだ。花十といふ銘で、花クルスと読む。」
場所が分かりやすく動画を追加しました。北野天満宮に来られることがありましたら、探してみてください😊
パウル・クレー・忘れっぽい天使
個人的観点ですが…灯篭に刻まれているマリア像を見る度にパウルクレーの作品『忘れっぽい天使』が浮かびます。
パウルクレーの「天使シリーズ」は谷川俊太郎さんの『クレーの天使」で紹介されています。その表紙に使われているのが「忘れっぽい天使」です。
なぜか…マリア像と忘れっぽい天使が妙に似ているように見えるのです。パウルクレーの天使と私の出会いは10年も前に遡りますが…その時、既にボケが進行中だった私は…「忘れっぽい天使」を見つけた時、とても嬉しかったのを今も覚えてます😅
音楽、文学、美術…全てにおいて…素晴らしい才能の持ち主だったクレー。特にバイオリンは音楽家のお父さんが感心するほどの腕前で、わずか11才で地元のオーケストラの非常勤団員を務めたようです。
裕福で…恵まれた環境で生まれ育ったパウルクレーですが…誰よりも苦しい晩年を過ごす事になります…。
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