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韓国人が書く底なし…?京都

源氏物語ゆかりの地・野宮神社で織りなす『源氏物語』の風景

『源氏物語』を読んだ事があるかと訊かれると、『ある』ですが、それは日本語ではなく訳された『源氏物語』でした。しかも読んだのは20年近く前の事。

殆ど内容も浮かばない年になってしまいましたが、それでも未だに印象に残っている場面と言えば、葵祭の車争いで深い傷を負った六条御息所がその悔しさのあまり生霊になて葵の上を殺すという恐ろしいシーンです。その後、六条御息所は嵐山のとある場所で光源氏と別れをするのです。

今回の投稿は『源氏物語』の「賢木」巻で登場する野宮神社をご紹介させていただきます。

源氏物語ゆかりの地・嵐山&嵯峨野

嵐山と嵯峨野は平安時代も身分の高い貴族の別荘地として人気がありました。それゆえ、「転ぶなら嵯峨野」という話が未だに伝われています。転ぶと「大丈夫ですか?」と手を指し述べる人が特別な人の可能性が高いという事ですが、それはそれは…。

という事で、紫式部もきっと嵐山に足を運んだのではないでしょうか。実際、嵐山は源氏物語にも登場します。明石の君のお住いが渡月橋周辺の大堰川(おおいがわ、渡月橋の下流からは桂川と名を変える)と設定されているのです。

しかも嵐山から進むと光源氏のモデルになったと言われる源融が住んでいたと伝わる「清凉寺」もあります。そして、光源氏と六条御息所の別れの場所も嵐山にあります。

嵐山~野宮神社

嵐山といえば渡月橋を浮かばせる方々も多いと思いますが、その渡月橋を渡ってから多くの人が向かう場所があります。その場所とは「竹林の小径」です。「竹林の小径」はバス停「野宮神社」前からだとすぐ。

でも、嵐山公園や嵐電の嵐山駅や天龍寺から歩いても軽く行ける距離でもあります。歩きながら出会う様々なお店も嵐山ならではの楽しみです。「竹林の小径」から近い距離にある栗最中はおすすめです。(一個400円)

四季変わらずの青々しい異世界が広がる「竹林の小径」は春と秋になると身動きができないほどの人出でにぎやかになりますが、いわば、ビックシーズンを避けるとゆっくり楽しめる「マイ竹林」でもあります。

滅多に見る事ができない、大雪の竹林はいつもとはまた違う雰囲気が感じられます。

野宮神社

そして、その「竹林の小径」を進むと現れるのが「野宮神社」…光源氏と六条御息所の別れの場所になります。写真は昨年の大雪の時の野宮神社です。

野宮神社の黒木鳥居はクヌギの木の皮を剥かないまま使用する、日本最古の鳥居の様式です。

境内にある「神石」は祈りを込めて撫でると願いが叶うと伝われています。

雪の野宮神社はモノクロですが秋の野宮神社は眩しいほどのグラデーションが広がるカラフルな風景になります。

境内には「じゅうたん苔」で知られる小さな苔庭があります。庭には遊び心が生み出したミニ嵐山と渡月橋が表現されています。橋の下の白い川だとか。野宮神社に行かれる際は…ぜひ、探してみてください。

野宮神社・源氏物語

源氏物語に野宮神社が登場するのは源氏物語54帖のうち第10帖の「賢木」。賢木という券名は野宮神社にサカキを持って六条御息所に会いに行った源氏と六条御息所が交わした歌に因んで付けられたと言われます。

源氏物語・賢木

http://codh.rois.ac.jp/software/iiif-curation-viewer/demo/?manifest=https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200003803/manifest&pos=352&lang=ja

第9帖『葵』で六条御息所は生霊になって出産中の葵の上にとりつきますが、葵の上は苦しみながらも男の子(夕霧)を出産します。無事、出産ができみんな安堵したその矢先、生霊は紫の上の命を奪ってしまいます。その続きの話が第10帖『賢木』です。

六条御息所は天皇の代理で伊勢神宮にお仕えする斎王に選ばれた娘が、身を清めるため野宮神社に行く事になったため、一緒に野宮神社に籠っていました。➡斎王 - Wikipedia

 

時は源氏23歳の9月、源氏は六条御息所に会いに野宮神社に向かいます。

神社で賢木(サカキ)の枝を折って、御簾の下から挿し入れ「私の心はサカキのように変わる事ないと自信をもって、勇気を出してここまで来たのに、あなたはなんであんなに冷たいでしょうか」と。

その源氏に六条御息所は「ここは心の変わらないという杉もないのに、あなたはなんと事してサカキの枝を折ってきたのですか」と返します。

「斎宮のいる場所と思うと懐かしくなって、このサカキを折ってきたのです」と源氏は続きます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(中略)

源氏は、「お縁側だけは許していただけるでしょうか」と言って、上に上がっていた。長い時日を中にした会合に、無情でなかった言いわけを散文的に言うのもきまりが悪くて、榊(さかき)の枝を少し折って手に持っていたのを、源氏は御簾(みす)の下から入れて、

私の心の常磐(ときわ)な色に自信を持って、恐れのある場所へもお訪ねして来たのですが、あなたは冷たくお扱いになる

と言った。

神垣(かみがき)はしるしの杉(すぎ)もなきものをいかにまがへて折れる榊ぞ

 御息所はこう答えたのである。

少女子(おとめご)があたりと思へば榊葉の香(か)をなつかしみとめてこそ折れ

 と源氏は言ったのであった。➡紫式部 與謝野晶子訳 源氏物語 榊 (aozora.gr.jp)

源氏に会って、心が揺れる六条御息所…。ですが、その後、六条御息所は娘と一緒に伊勢に向かいます。

野宮神社での別れの後、その二人が会えるのは六条御息所が死を迎える時。六条御息所は源氏に娘の事を頼んで、その後、世を去ります…が死後も人にとりつく事になるという…なかなか成仏できずの人生になります。

賢木

「賢木」(サカキ、榊、楊桐、栄木)は神社の神棚や祭壇に供えるなど神事にも用いられる植物です。それ故、サカキは神社で見かける事が多いでとも言えます。北野天満宮と蚕ノ社にもサカキが植えられています。特に蚕ノ社は境内の至る所でサカキの木が植えられているので、夏はサカキの花が楽しめます。

サカキの花・北野天満宮

サカキの花・蚕ノ社

野宮神社・絵馬

野宮神社の絵馬はとても鮮やかでかわいいです。野宮神社は初めて絵馬を書いた神社でもあるので、個人的にも思い出がある場所です。

野宮神社・御朱印

野宮神社・お守り

野宮神社・ホームページ

野宮神社・アクセス

【番外編】青空文庫・源氏物語

青空文庫では与謝野晶子さんが訳した『源氏物語』が公開されています。興味のある方はリンク先をご参照ください。➡作家別作品リスト:紫式部