由岐神社の例祭:神秘的な鞍馬の火祭 in 京都！(10月22日）

鞍馬の火祭・20071022

日本三大火祭であり、京都三大奇祭でもある「 鞍馬の火祭」をご存じですか？

「 鞍馬の火祭」は毎年、時代祭と同じ日の10月22日に鞍馬で行われる由岐神社の例祭です。「鞍馬の火祭」も祇園祭や時代祭と同じく……コロナ禍で2000年と2001年は中止になりましたが、2022年から再開されました。

今回の投稿では「鞍馬の火祭」をご紹介いたします。

鞍馬の火祭

「鞍馬の火祭」は毎年10月22日の夜に鞍馬で行われる由岐神社例祭で、京都三大奇祭の一つでも知られています。

京都三大奇祭

今宮神社・やすらい祭

広隆寺・牛祭

由岐神社・鞍馬の火祭

鞍馬の火祭・由来

天慶三年(九四〇年)御所にお祀りされていた由岐大明神を、当時、天慶の乱や都の大地震など騒然とした世の中の平安を願い、当時の朱雀天皇の詔により御所の北方に当たる鞍馬へ由岐大明神を御遷宮され、都の北方の鎮めとされました。

御遷宮の時に手には松明を持ち、道々にかがり火を焚き、鉾を先頭に、その行列は十町(約一キロメートル)にも及び、天皇自らの国家的一大儀式でありました。

この儀式と由岐大明神の霊験を後世に伝え守ってきたのが鞍馬の住民であり、由岐神社の例祭(鞍馬の火祭)の起源であります。　　

➡『鞍馬の火祭』 パンフレットより

鞍馬の火祭・『古都』

古都（新潮文庫）

『古都』の「秋深い姉妹」には「祭りのじつに多い京都で、千重子は、鞍馬の火祭りが、むしろ大文字よりも、好きであった。」 と書かれています。

ここで……中京区の呉服問屋の１人娘で、「花やったら、ここの紅しだれよりほかはみたいことない」）と言う千重子が、祭りの中で「鞍馬の火祭り」が何より好きというのはちょっと意外と思われます。

一方、清水寺から眺める夕焼け空が好きで…自分の感情が「ありすぎて…困るみたい」という千重子が北山杉と青連院の楠という正反対の形である木を好むのを考えると、平安神宮の紅しだれ桜と北山杉が千重子の外面に近く、青連院の楠と鞍馬の火祭りは千重子の内面の反映とも考えられます。

目の前で燃える大松明は夢幻的雰囲気の中、神の降臨まで感じれるような神聖ささえ感じられるのです。もしかすると、千重子はその神聖さの中で自分の内面の精化を求めたのではないでしょうか。

また……その神聖さにより、「仇野あたりの無縁仏のうちにもおいやすやろう」）千重子の産みの親との邂逅の場になるとしてもより相応しいのではないかと思ういます。

しかし、「鞍馬の火祭」はやや激しい祭りであり、夜６時からスタートした祭りは夜遅くまで続きます。その事から考えると、中京区住まいの千重子にとって鞍馬は…（例えご両親と一緒だとしても…）決して気軽く…出かける場所とは言えません。

一方、着物姿で高尾まで行って、そこから北山杉に進む千重子の姿を考えると、「鞍馬の火祭」が行われる鞍馬は千重子にとっては遠くとも言えないかもしれません。

そこで、気になるのは....いつも着物姿の千重子が「鞍馬の火祭」にはどのような服装で行ったのか....という疑問が残りますが、やはり着物ではないかという気がします😅

『古都』の中では「鞍馬の火祭」は中止になりますが、「祇園祭」と「時代祭」は予定通り行われ、その当時の様子が作品の中で詳しく描かれていますので、気になる方はいかがですか？

鞍馬の火祭・20071022

鞍馬の火祭・20071022

「鞍馬の火祭」に行ったのは2007年の一回だけで、写真もあまり撮っておらず、鞍馬に着いたのが遅かった事もあり、由岐神社に行く事も出来ませんでした。コロナが落ち着いたら、ゆっくり鞍馬に行ってみたいです。

　　

鞍馬の火祭・20071022

鞍馬の火祭・20071022

鞍馬の火祭・動画

鞍馬の火祭・叡電＆火祭ダイヤ（2025）

鞍馬の火祭当日の鞍馬発出町柳ゆきの最終列車は23:24発です!

行かれる方は覚えておきましょう。 

鞍馬の火祭・ 臨時バスの運行および32系統・52系統区間運休のお知らせ

詳しい内容はリンク先をご参照ください➡新着情報｜京都バス株式会社

鞍馬の火祭・臨時交通規制

由岐神社・ホームページ

鞍馬の火祭・アクセス

市バスで出町柳駅まで行って、出町柳駅から叡電に乗って終点の鞍馬で降ります。

https://eizandensha.co.jp/guide/station/demachiyanagi.html

まとめ

「鞍馬の火祭」は毎年10月22日に行われます。つまり…時代祭と同じ日であるため、時代祭が終わった後、出町駅で叡山電鉄鞍馬線で鞍馬に行く人も多いです。私も時代祭を見て、鞍馬に行きました。出町駅では鞍馬行きの電車を待つ人も多く、いざ、鞍馬に着くとすごい人波…。

 

山なので……夜が早いだけに、闇の中...燃え上がる松明と続くかけ声にはかなりの迫力を感じました。その反面、間近で燃える松明が通るので、けがをしないように気をつけるようにと配れるチラシなどにも書かれていました。

 

「鞍馬の火祭」当日は鞍馬集落内に収容できる人数を超えた時点で、鞍馬行きの乗車券の販売は中止となるようです。まだまだ色々と感染症が流行っているこの時期.「鞍馬の火祭」に行かれる方々……感染症対策の上、お気をつけて行ってらっしゃい。

番外編・最初はすべてが光だった

小説の中に鞍馬の火祭を入れております。気になる方はリンク先をご参照ください。

➡最初はすべてが光だった - kyotostory🌸

（前略）

私は父の転勤先だった京都で生まれた。母は鞍馬の火祭が大好きだったらしい。

ーーあなたを見籠った事も知らずにパパと鞍馬の火祭に行ったわけ……。

母は私によく鞍馬の火祭の事を話してくれた。

鞍馬の火祭が行われる一〇月二二日は時代祭で知られている。多くの観光客はもちろん、京都に住んでいる人でさえ、その日、時代祭の後に鞍馬で火祭が行われる事は殆ど知らない。

しかし、母は時代祭を逃しても鞍馬の火祭だけは行ったらしい。

ーー今までの京都で感じた事と全く異なる何かがあの夜の鞍馬にあったの、と母は話した。

真っ暗な山村、そこで燃え立つ巨大な炎と響く掛け声……鞍馬の火祭は祗園囃子のやさしさや大文字の遥か向こうの揺らめく美しさとは全く違う。

ーー目の前で燃えている底を知らない火の塊は、京都に来て初めてここは京都だと私に示してくれたわ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊

「由莉(ゆり)」という私の名前は鞍馬の火祭が行われる由岐神社から貰った。母は「由岐」と名付けたかったと話した。しかし、父は「神社の名前をそのまま子供の名前に使うのは神様に対して失礼じゃないか」という事で、由岐神社の「由」に母が好きな金木犀に因んで「莉」を入れたら？と提案した。

母は金木犀の花が好きだったのは私も知っていた。秋になると、母はいつも金木犀のシロップを作っていた。私が住んでいたマンションは桜と金木犀の花が綺麗だった。金木犀は駐輪場の奥にたくさん植えられていて、秋になると駐輪場は金木犀の香りが満ちていた。

母はマンションの管理をしていた西村さんにお願いして、駐輪場に咲いている金木犀の花をもらう事ができた。母は金木犀の小さな花をいっぱい摘んで、その小さい花びらから枝や茎、ほこりを取った。

私が金木犀のシロップ作りを手伝い始めたのは幼稚園に入ってからだった。花びらに付いている緑の茎を取るのは、シロップ作りで一番手間がかかる作業で、大の苦手だった。

一時間近く、目を細めながら茎と花びらを分けると親指と人差し指あたりに色が付いて微かに花の香りが残った。何回洗っても、その色と香りは消えなかった。

母は白砂糖とワインで作ったシロップを小さい瓶に入れて、一つはマンションの西村さん、もう一つはピアノを教えてくれる藤井先生に渡した。残りのシロップはジップロックに入れて冷凍庫に保存して、夏は冷えた炭酸水を入れて、冬は沸かした水にハチミツを入れて飲んだ。

ーー由…莉…とその名前を口に出すとほのかな金木犀の香りがする気がしたの、と母は言った。その上、父の好きなジャスミンの香りも感じたようで、私の名前は由莉に決まった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　＊

鞍馬の火祭は私が生まれてからも毎年のように行ったらしい。

ーー由莉を初めて鞍馬の火祭に連れて行った時はびっくりしたのね。

不思議だが、私はその日の事を鮮明に覚えている。恐らく、あれは二歳頃だった。乳母車で気持ちよく出かけたが、いつの間にか私は抱っこひもの中で寝ていた。

ふと目覚めると見た事のない服を着た大勢の人が大通りを歩いているし、母の周りにも半端ない人出だった。見慣れてない風景に私は泣き出した。母は周りの人に謝りつつ、列から出た。京都御所の中だったらしく、母は私を時代祭の列から離れたベンチに座らせて、「時代祭、人多いね。怖かったね」と優しく微笑んでくれた。

その母の顔を見て私は安心したのか、再び寝てしまった。母はベンチに座ったまま、膝の上に私を下ろして寝かせてくれた。暖かい夏が近づいている気がした。

私が起きるのを待って、母は手作り弁当と麦茶を出した。弁当の中にはおにぎりと小さいだし巻き卵とブロッコリーがバランスよく並んでいた。母の手作りおにぎりは個別包装の韓国海苔を袋ごと細かく砕いて、砕いたのりを小さく丸めたご飯にたっぷりつけたもので、私の大好物だった。お弁当は母も一緒に食べた。

その後、母と出町柳駅に向かった。父とは出町柳駅で待ち合わせをしていた。

外で会う父が私は好きだった。幼い私から見てもでも父が人の目を惹く存在である事に気付いていた。父を初めて見たクラスの子達はよく「由莉ちゃんのお父さんは外国人なの？」と聞かれた。父は日本人なのになぜか外国人のように見える所があった。特に太い眉毛と深い目はハリウッド映画に出てくる誰かと似ていた。そんな父が満面の笑顔で私を抱き上げると私は誇りに満ち溢れた。

父は鞍馬の火祭が終わるまで私を抱っこしてくれた。その父の逞しくて暖かい胸に抱かれた私は目の前で燃える火を見ても怖いという気持ちより、その火で赤く染まる父の顔を見上げるのが楽しくてしょうがなかった。周りの小さい子達が泣き出す中、私はずっとニコニコと父の顔ばかり覗いていた。

その私に母も父もびっくりした。私を初めて鞍馬の火祭に連れて行く上に二人はある覚悟を持っていた。それは私が泣き出したら、その時点で祭は諦めて帰るという約束だった。

ーー由莉が燃える火を見て大泣きすると思ったけれど、泣き出すどころかとても楽しそうでびっくりしたわ。でも、それで由莉は強くなった気がするのよね。と、話す母はいつも懐かしい目をしていた。

（後略）