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京都の巨木をめぐる旅:青蓮院のクスノキ

京都の街を歩くと、歴史ある寺社の境内にそびえる巨木に心が惹かれます。
京都の寺社にそびえる巨木たちは、何百年もの歳月を経て、街の景色や人々の暮らしに静かに寄り添っています。
「京都の巨木をめぐる旅」シリーズでは、そんな巨木をひとつずつ取り上げ、歴史・文学・個人的な思い出と共に紹介していきます。

本記事では、青蓮院門跡に立つ樹齢八百年を超えるクスノキに焦点をあてます。

青蓮院のクスノキ

青蓮院のクスノキ

青蓮院門跡にも、そんな巨木があります。樹齢800年以上とされる京都市の天然記念物であり、京都の自然200選にも選ばれているクスノキです。

青蓮院の5本のクスノキは、主に入口の前に並び、訪れる人を迎えるように立っています。

青蓮院のクスノキ

20071107・青蓮院のクスノキ

この木は、ただの巨木ではなく、過ぎ去った時間を抱え、人々の記憶や思い出を映す存在でもあります。

川端康成『古都』とクスノキ

川端康成の『古都』にも、このクスノキは登場します。
千重子と父親が立つ場面では、文学の中で巨木が心の静けさや思い出を映す象徴として描かれています。

「お父さん、あのへんをお歩きやすなら、青蓮院のとこを、ちょっとだけ、通ってっていただけしまへんやろか。」と、千重子は車のなかで頼んだ「ほんの入り口の前だけ……。」

「楠やな。楠が見たいのやろ。」
「そうやの。」千重子は、父の察しのいいのにおどろいた。「楠どす。」
「いこ、いこ。」と、太古郎は言った。「お父さんもな、若いときに、あの楠の大木の木かげで、友だちと、いろんなことを、話したもんやった。―――その友だちは、もうだあれも、京都にいやへんけど。」


―― 川端康成『古都』(新潮文庫・2006年版)

文学の中のクスノキも、私の記憶の中のクスノキも、どちらも静かに人の心を受け止めてくれる存在であり、時には恐ろしい力を感じさせる存在でもあります。

心がざわざわする時はここに来て、楠をひたすら眺めたりしました。すると不思議なことにどんどん心が落ち着いて、なんだかんだいけそうな気がするんです。初めてここの楠を見たときは本当に怖くて…。中学校にあったライラックの木を思い出したんです。同然、あの日の事も。花が咲くはずもないのに、あの甘い香りがすっと通った気がして。

➡「天神川でホタルの夢を見る」のメモから。

まとめ

京都の巨木としての青蓮院のクスノキは、文学の世界でも、個人の記憶の中でも、時を超えて静かに佇み続けています。

最近では、青蓮院の夜の庭がライトアップされ、幻想的な光景を楽しめる特別拝観も行われています。

夜の特別拝観で庭がライトアップされると、ただ明るく照らすだけでなく、光の間に沈黙のような安らぎが広がります。
木々の影と光の調和は、まぶしさではなく、訪れる人の心をゆったりと包み込む静謐な時間を生み出します。


昼間の記憶、文学『古都』の情景、そして夜の庭の光景――どれも青蓮院のクスノキと共に心に深く刻まれる瞬間をこの秋、体験してみてはいかがですか?

青蓮院門跡 五年ぶりの夜の特別拝観へ

🔹ライトアップの詳細は別記事でまとめていますので、こちらからご覧ください。

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