
よしもとばなな『ハードボイルド/ハードラック』
よしもとばななさんの『キッチン』は、私が初めて読んだ日本文学です。(韓国語で読みましたが😅)

子どもの頃から本はかなり読んでいましたが、『キッチン』はそれまでの読書体験とは少し違うものでした。今はあまり内容は覚えていませんが、キッチンでピーラーについて語れられたシーンがとっても印象的だった事、友人のお母さんが実は男性だった過去があった事は未だに覚えています。
今でこそ、多様な生き方や家族の形は以前より語られるようになりましたが、当時の時代背景を考えると、それはとても大胆で、簡単には受け止めきれない設定でした。
それゆえ、「え!ありえない!」と感じた記憶があります。
その後、よしもとばななさんの作品をいくつも読むようになり、今回「みんなの本棚」に選んだのが『ハードボイルド・ハードラック』です。
ハードボイルド・ハードラック
ラッキーだけが続く人生はない。
『ハードボイルド』では、アルコール中毒者による火事が起こり、本人は逃げて生き延びる。けれど、隣の部屋にいたチズルは死んでしまう。
生き残った者と、偶然のように命を落とした者。その差は、努力でも選択でもなく、ただ、運だったのかもしれない。
そして『ハードラック』では、ただ頑張るだけだった人が、倒れ、死を待つような時間の中に置かれます。
ハードラックを背負う人。その人を見送る人。残されて、これからをハードボイルドに生きていくであろう人たち。
物語の中には、冬空のように広がる悲しみがあります。冷たく、静かで、覆い尽くすような悲しみ。けれど、その悲しみの中に、彼らは確かに未来を足しています。
希望とは呼べないかもしれないが、それでも、生きていくという選択だけは、静かに置かれているのです。
人生は、思い通りにいかないのが多い。それゆえ、ついている人より、ついていない人の方が、きっと多い。私自身も、そう思いながら生きてきました。
けれど振り返ってみると、すべてが不運だったわけではなくて、あの時も、この時も、「ハードラック」と「ハードボイルド」を繰り返しながら、私は今があるのかもしれない。これから先は、もう少しソフトな日々が続いてほしいです。
傷ついた時間も、遠回りも、意味のないものではないという事をこの本は教えてくれます。興味のある方はぜひ、手に取ってみてください。